「また口内炎ができた…」「痛くて食事が楽しめない」。チクッとした小さな痛みから、私たちの日常のささやかな楽しみを奪っていく、やっかいな口内炎。多くの方が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
こんにちは。口腔ケア専門ライターの中原志保です。歯科医師として長年、多くの患者さんのお口の悩みと向き合う中で、「たかが口内炎」と軽視されがちなこの症状が、実は体からの大切なサインであること、そして時には重大な病気の兆候である可能性もあることを、強く感じてきました。
この記事では、なぜ口内炎ができてしまうのか、その原因を分かりやすく解き明かし、痛みを和らげ、一日も早く治すための効果的なセルフケア、そして「これは病院へ行くべき?」と迷ったときの明確な目安を、専門家の視点から丁寧にお伝えします。この記事が、あなたのつらい症状を和らげ、健やかな毎日を取り戻すための一助となれば幸いです。
目次
あなたの口内炎はどのタイプ?主な原因を知ろう
一口に「口内炎」と言っても、実はいくつかの種類があり、原因も様々です。ご自身の口内炎がどのタイプかを知ることが、適切なケアへの第一歩となります。
最も多い「アフタ性口内炎」とその引き金
口内炎の中で最も一般的なのが、白く円形で、周りが赤い「アフタ性口内炎」です。はっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、主に免疫力の低下が大きな引き金になると考えられています。仕事の疲れや人間関係のストレス、睡眠不足、栄養の偏りなどが重なると、私たちの体は抵抗力を失い、粘膜のトラブルとして口内炎が現れやすくなるのです。特に、皮膚や粘膜の健康維持に欠かせないビタミンB群の不足は、アフタ性口内炎の直接的な原因の一つとされています。
物理的な刺激で起こる「カタル性(外傷性)口内炎」
うっかり頬の内側を噛んでしまったり、硬い食べ物や歯ブラシで粘膜を傷つけてしまったりした後にできるのが「カタル性口内炎」です。傷ついた部分に細菌が繁殖し、赤く腫れたり、水ぶくれになったりします。合わない入れ歯や、欠けた歯が常に粘膜に当たっている場合にも起こりやすいのが特徴です。
ウイルスや細菌が原因となる口内炎
上記の他に、特定のウイルスや細菌の増殖によって引き起こされる口内炎もあります。「ヘルペス性口内炎」は単純ヘルペスウイルスへの感染が原因で、小さな水ぶくれが多数でき、発熱や強い痛みを伴うことがあります。また、「カンジダ性口内炎」は、お口の中に元々いるカンジダというカビ(真菌)が、体の抵抗力が落ちたときなどに異常増殖して起こります。白い苔のようなものが粘膜に付着するのが特徴です。
今日からできる!痛みを和らげ、早く治すためのセルフケア
つらい口内炎は、少しでも早く治したいもの。ここでは、ご自宅でできる効果的なセルフケアをご紹介します。
食事で内側からケアする
口内炎の改善には、体の内側からのアプローチが欠かせません。特に、粘膜の健康を守るビタミンB群を積極的に摂取しましょう。
- ビタミンB2が豊富な食品: レバー、うなぎ、納豆、卵、乳製品など
- ビタミンB6が豊富な食品: マグロ、カツオ、鶏肉、バナナ、にんにくなど
痛みが強くて食事がつらい時は、おかゆやスープ、ヨーグルト、ゼリーなど、喉ごしが良く、刺激の少ないものを選びましょう。逆に、以下のような食事は症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。
| 避けるべき食べ物・飲み物 | 理由 |
|---|---|
| 香辛料の多いもの | カレー、キムチなど。直接的な刺激になります。 |
| 熱すぎるもの | 患部を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。 |
| 酸味の強いもの | 柑橘類、酢の物など。強い痛みを感じることがあります。 |
| 硬い・尖ったもの | せんべい、ナッツなど。粘膜をさらに傷つける恐れがあります。 |
| アルコール飲料 | 血行を促進し、炎症を強めることがあります。 |
お口の中を清潔に保つ
お口の中が不衛生だと、細菌が繁殖し、口内炎の治りを遅らせてしまいます。柔らかめの歯ブラシを使い、患部を傷つけないように優しく丁寧に歯磨きをしましょう。また、殺菌成分の入っていない、刺激の少ない洗口液でうがいをするのも効果的です。
全身のコンディションを整える
口内炎は「体が疲れているサイン」でもあります。夜更かしを避け、十分な睡眠時間を確保しましょう。ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったり、好きな音楽を聴いたりして、心と体をリラックスさせる時間を作ることも、免疫力を回復させ、口内炎を早く治すための大切なケアです。
【歯科医が解説】こんな症状は要注意!病院へ行くべき5つの目安
ほとんどの口内炎は1〜2週間で自然に治りますが、中には注意が必要なケースもあります。以下の5つの目安に当てはまる場合は、自己判断で様子を見ずに、専門医に相談することをお勧めします。
- 2週間以上経っても治らない、または悪化する
- 口内炎が広範囲に広がっている、または数が10個以上ある
- 痛みが非常に強く、水分を摂るのもつらい
- 発熱やリンパ節の腫れなど、全身の症状を伴う
- 一度治っても、すぐに同じような場所に何度も再発する
これらの症状は、単なる口内炎ではなく、他の病気(ウイルス感染症、自己免疫疾患、あるいは稀ですが口腔がんなど)のサインである可能性も考えられます。
どの病院に行けばいい?診療科の選び方
「口内炎で病院に行くべきなのは分かったけれど、何科に行けばいいの?」と迷われる方も多いでしょう。
基本的には、お口の中のトラブルの専門家である歯科・口腔外科、または喉や口の粘膜を専門とする耳鼻咽喉科を受診するのが一般的です。どちらを受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけの歯科医院に相談してみるのが良いでしょう。
お子さんの場合は、まず小児科に相談してください。また、皮膚にも症状が出ている場合は皮膚科、全身の倦怠感などが強い場合は内科が適切な場合もあります。
まとめ
今回は、しつこい口内炎の原因から、ご自身でできる効果的なセルフケア、そして病院を受診すべき目安までを詳しく解説しました。
- 口内炎の主な原因は、免疫力の低下、栄養不足、物理的な刺激など様々
- セルフケアの基本は「栄養」「清潔」「休養」
- ビタミンB群を積極的に摂り、刺激物を避ける食生活を心がける
- 「2週間以上治らない」など、5つの目安に当てはまったら迷わず専門医へ
- 受診する際は、まず「歯科・口腔外科」か「耳鼻咽喉科」に相談を
口内炎は、私たちの体が発する小さな悲鳴です。そのサインを見逃さず、ご自身の体をいたわってあげることが、症状の改善、そして再発の予防に繋がります。そして、少しでも「おかしいな」と感じたら、決して一人で悩まず、専門家を頼ってください。その勇気が、あなたの健康な毎日を守る大きな一歩となるはずです。

